わくわく日記

さんろーのじゅけんにっきだよ!

人生の間隙

「人々は自己の苦難にばかり目が行って、苦痛を知らない都合の良い他者を想定し、妬み、嫉み、憎む。」

 

この春、私は新入生を装ってテニサーの新歓に潜入してきた。3回目の1年生に突入した友人からの「お前は無自覚な無気力状態のなかで、負のオーラを纏っている。テニサーに行き、少し療養するといい」という助言でテニサーに行ってみることにしたのだ。

あらゆる無為なる振る舞いを積極的意思によって排除してきた私の洗練された動作群は、なるほど周りの者たちからは面黒く見えたようだ。その上、クリスマス頃に切ったきり伸ばし続けてきた頭髪、髭はさながら落ち武者を思わせるようだ。

「やつらもボランティアじゃない、身だしなみは整えよ」とのことなので、床屋にいき、頭髪を整えてもらった。私が私だと認識できなくなるほど切られた髪に少なからず不満を持ったものの、少しすれば「新歓で知り合いと会ったときに自分だとバレないのでいいかもしれない」と思うようになった。次に服を一式揃えた。友人の見立てで、少し体ががっしりしている私はアメリカンカジュアル(?)が良いとのことなので、それを購入した。

 

私は全く意気揚々としていた。自分が人形になって遊んでいるかという楽しさと、まるで自分の誕生日パーティーにでも赴くかのようなわくわくした感じがあった。

指定された場所に指示された時間にいき、他の新入生、サークル員の登場を待った。5分ほど待ってから現れた彼ら彼女らはとても輝いていた。私が感じていた絶望にも似た感情など一切味わったことのない純情さを彼ら彼女らからは感じた。

店に移動し、テーブルに分かれる。まずは各々の自己紹介をし、サークルの説明を受けた後、フリートークだ。

 

(彼らは第一志望でこの大学に入っているようで、劣等感など欠片もなくこれからはじまる順風満帆な日々を疑っていなかった。私は兄が滑り止めにしていた高校に通い、大学も兄の滑り止めに通っている。だからか少なからず劣等感を持ちつつ通っていた。仮面浪人をした原因もそこにあるのかもしれない。)

普段の私ならあたふたして何も喋っていなかったはずだが、このときの私は心持ちは穏やかに、楽しく人と話していた。

場は勢いを増していき、学生の注目を集め、酒を喉に垂れ流す者が現れだした。目の前の女は隣の男の太ももを撫でている。隣の女は私の耳元で「おっぱいだよ〜」と言っている。私は「ありがとうございます。気持ちだけいただきます。」という言葉とともに席を立った。漏れかけた溜息を酒と一緒にぐっと飲み込み天井を見つめる。

彼女は後に「ああ(酒を飲み馬鹿騒ぎ)すると、つらいことが忘れられる」と言っていた。

 

私が想定したあの聖のテニサー像は…。

喧騒を抜け、お金を残して店を出る。「隣の芝生は青いなぁ」そんな独り言をしながら帰路についた。